先週の金曜日に1回目を観に行って、翌々日の日曜に2回目を見ました。同じ映画を2〜3回観ることはありますが、こんな最速でおなじ週末のうちに2回観たのはたぶん初めてです。あれ、シンウルどうだったかな……次週だったと思うんだけど。もっかいくらい観たいです。
スラムダンクは、リアルタイムにジャンプで読んでてなおかつ単行本も全部持ってたんですけど、終わったあと何度か引っ越すうちに手放してしまいました。特に同人活動などもやっていなかったし、数読んだうちの過去の漫画のひとつになっていて、正直キャラクターの名前も背景もうろ覚え。そんな状態でも楽しめるよ、って友達にお勧めされて観に行ってきたんですけど、金曜日に衝撃受けすぎて土曜日に家族を口説き落とし、日曜日に夫と娘を連れて2回目を観に行くことにしました。
ちょっとMastodonで吐き出すにもクソデカ感情すぎるので、ブログで記事にしときます。
Contents
感想(ネタバレなし)
映画としての構成力がすごい
何がそんなに良かったのか、というところですが、まず映画としての構成力ですかね。映画の感想で何を言ってるんだお前は、って感じですが、2時間に詰め込む情報量じゃないんですよ……。基本的に、まず映画としてめちゃくちゃ面白い。観てる内容としては「バスケ1試合」なんですけど、その1試合、飽きずに、しかも最初の期待値から最後の期待値がどんどん上がるような仕掛けがめちゃくちゃたくさんあります。
映画としては「あれも盛り込みたい」「これも盛り込みたい」をやると、だいたい冗長になったり、監督的には気に入っているシーンなんだろうなと思っても観客的には別にいらないシーンが入り込んだり、途中で盛り上げ過ぎたばかりに最後は失速したり、中だるみしてしまったり、みたいなことになりがちなので、2時間の枠を魅力的に見せるために「背景はにおわせつつも」「具体的な要素はそぎ落とす」のが映画やアニメや小説などの創作の基本……だと私は思っていました。
特に、話の筋が込み入ってくるとついて行けない観客が多くなってしまいますし、なかでも、原作があるものの映画化は初見の人を置き去りにしがちです。なんですけど、この映画はそれをやってのけている、というのがまずもって最大の感動ポイントでした。ただでさえ1試合と各人のエピソードを織り交ぜて見せる、なんて離れ業をやる映画なのに、最後の着地まで綺麗に決めきっているとか、井上先生いったい何者なの? 天才なの? 鬼才なの? 脳みそが2時間でこれを観たことを理解し切れていないんだが……? みたいな気持ちでした。
クリエイター、創作をしている人は、本当にみんな見て欲しいです(強めの圧で。学ぶところが死ぬほどあります。
音楽・効果音がいい
次に感動したのは、とにかく音がいいです。効果音が入ってくるタイミングがめちゃくちゃ良いってのもありますし、ひとつひとつの音が偽物じゃない。たとえばドリブルの音、あのダムダムの中にあるキンとした高音がちゃんとあり、「うおーバスケットボールの音だ」って感じで、臨場感抜群でした。なので是非、映画館の中でも音が良いところで1度は観て欲しいなと思います。ちなみに私は2回ともフレックスサウンドという席全体から音が出る席で観ました。
効果音が効果的に使われているのもあるのですが、映画なのに「無音」を意識的に使っているのも印象的でした。緊張感というか、時間が止まって感じる瞬間を本当に効果的に表せていて、それも合わせてとても良かったです。
オープニング、エンディング曲もぴったりすぎて、それも涙を後押ししました。即ダウンロードしました。
作画がいい
基本的に漫画に忠実な絵柄(まあ井上先生が監督なので当たり前と言えば当たり前なんですけど)で、原作を知っていても全く違和感なく観られました。昔のアニメも観ていたので最初は「花道の声が若い」って思いましたけれども、性格がそのまんまなのですぐに違和感なくなった感じです。
で、恐らくこれも井上先生の漫画の構成力というか、魅力的な絵の見せ方が反映されていたんだと思うんですけど、全コマ……全カット? 無駄がないっていうか、ああこの構図は理由のある構図だなってのが感じられまして、それも良かったです。映画なのに、絵が全部、漫画読んでる面白さって、やっぱなかなかないんですよね……。私は漫画が描けないのでうまい言い方が思いつかなくてもどかしいんですけど、伝わるかなあ。どこ切り取っても絵になる感じ。
当たり前だけど原作の設定から1ミリもぶれてない
これも嬉しかったです。漫画を原作にした映画とかアニメって、原作者の手を離れた瞬間にいろんな「大人の事情」で変わっていくことが本当に良くあって、こちらも大人なので「大人の事情なんだろうな」って思いつつも諦めに似た気持ちで受け入れる事が多いんですが、今作はそれがなかったのが良かったです。
私は映画化やドラマ化で、別の方の思惑や解釈が挟まっていくのも創作のひとつであると思っているので、特段文句は言わないのですが、愛が深いとやっぱり少し悲しい気持ちになります。特に、自分が原作者だったらこれは受け入れられるだろうか? というものであるほど、原作者の方の気持ちに寄り添いすぎてしまうきらいがあります。
ですが、今作は井上雄彦先生が脚本も監督もされているので、当然だけど1ミリも原作から設定がぶれていません。このキャラはこんなこと言わない、しない、ってのがひとつもなく、それも観ていてとても嬉しかったです。なんて幸せな映画なんだろう。こんな映画を観られて本当に幸せだし、井上先生、こんな映画を作れて本当に幸せだろうなあ、って、それが一番、たぶん嬉しかったです。
ネタバレなし感想はここまでで。
ここからすこし開けまして。
ネタバレ有り感想を書きますよ。
準備はよろしいです?
ネタバレ含みますよ?
ではいきます。
感想(ネタバレ有り)
ママの葛藤が良かった
あの5人に触れず、そこなのか、という感じですが、リョータのママの描き方が「えっ、サブキャラでこんな人間的に深みのあるキャラクター作れます……??」って衝撃だったんですよ。
ママは夫と子供の死からなかなか立ち直れず、リョータとうまく向き合えない。リョータは映画中で「俺はかーちゃんを怒らせてばっかりだ」って泣いてましたけど、それはママの方も同じで、なんでソータの代わりとしてじゃなくてリョータをそのまま受け止めてあげられなかったのか、あの時抱き留めてあげられなかったのか、たぶん後悔してたんだろうなってのが分かりました。
別にひいきしていたわけではなく、突然目の前から去ってしまった人たちというのは、気持ちの一部分を持って行ってしまいます。ソータはきっとそんなこと望んでないだろう、って頭では分かっていても、かなしみで欠けてしまった心はなかなか元に戻りません。そんな中では、人間なので、後悔してしまう選択をすることはあるでしょう。衝動的になることもあります。
その痛みを抱えて、でも生きていかないといけなくて、とりあえず必死で生きていく。立ち止まって振り返って「あの時こうしていれば」「取り返しがつかないことをしてしまった」って思うこともあると思います。だけど、結構な年を重ねた大人であっても、気づいたところから生き方を変えてもいいんだよってのが、個人的に心臓を撃ちぬかれてしまいまして、そこがまず号泣ポイントでした。
アンナちゃんはいい子過ぎてこの後ぐれそうだけどお兄ちゃんがしっかりしてるからきっと大丈夫……。
回想シーンとセリフが良かった
リョータは今回主人公扱いだったんで深く掘り下げるのはそうなんですが、そのほかの4人もある程度背景が描かれていたのが良かったなーと思います。とりあえずリョータにフォーカスして他のメンバーはまあ知ってるだろ、って感じじゃなくて、どのメンバーにもそれぞれの思いや過去があるんだよ、それぞれこういう性格なんだよってのを、リョータを中心に見せてくれたので、原作ウロでも楽しめました。初見の娘も映画見ただけでなんとなく関係性がつかめてたので、本当に程よく見せてくれていたんだろうなと思います。
あとは、どっかで深く信頼しているセリフが多く残してあったのも良かったです。これがスラムダンクだよねー、って思えるというか。特にぐっと来たのは、流川の「そんなタマじゃねえよな」とか。ジャンプ漫画だなって言われればそうなんですけど、それが魅力なんだからいいんですよ! お決まりの「諦めたらそこで試合終了ですよ」も聞けて嬉しかったですかね。
期待値を超えてくる
これ。ここが盛り上がりの最大ポイントかな~ というシーンと話の流れのあとにもうひと山あって、しかもめちゃくちゃ感情の波が高い。ディ●ニー映画ならたぶんもうここでエンディング流れてただろうみたいなところで終わらない。ラストシーンに向かう部分の見せ方も、その場面の絵柄も、音も(無音も含めて)、なんというか全部が私の想像をはるか高く飛び越えたところにあり、40年以上生きていても、まだ映画で期待値を裏切られることってあるんだな……。って思って、それも感動しました。
勝つって知ってるし、入るって知ってる。けど、そういう人でもドキドキするし、感動する魅せ方をめちゃくちゃ試行錯誤してくれたんだろうなってのが、もう本当にありがたかったです。だって2回目も「入ったー!」って思ったし泣いたもんw 1回見てるのにさ。それくらい完璧だったんですよ。
こんな感じかな。
そんなわけで
スラムダンク新装版全巻セットをぽちりました。
12月公開以降、面白いと言われながら仕事を理由にずっと行けてなかったんですけど、今更でも興味がわいた人は是非映画館で見てね!! 私はこれからコミックスを読み直します。すでに2巻まで読んだけど面白いね!