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書道と書写と承認欲求

 Twitterを離れてからぼんやりと感じていたことをぼんやりと書きます。

 私の趣味は書道と書写と短歌と釣りとアクセづくりと小説や技術書を書くのと、あとなんだ、なんかもう「そういえばあれもかじったな」みたいなものまで含めると無数にある趣味ホッパーなんですが(飽きっぽいともいう)、Twitterではありとあらゆる話題について「初めまして」みたいな人からリプライをもらったり、何の気なしに投稿したものが思いのほか拡散されたりなんてことが日常的に起きていました。フォロー・フォロワーが多かったこともあるかなと思いますが、Twitterは拡散されやすい媒体であるってのもその理由だったように思っています。

 特に書写については、巨大なタグコミュニティ #朝活書写 に参加していたこともあり、そのタグつけて投稿するだけで1日に20や30のいいねがついていました。私自身はタグを見ていいねを付けには行っていなかったにも関わらず(すみません)、その数です。そしてタグつけてる人を観察していると、同様の趣味を持っている人に対して積極的に関係を持ち、濃いコミュニケーションをもとうとする人たちも多くいらっしゃったように思います。#書道 のタグが全く活況でないにも関わらず、#朝活書写 は大盛況でした。

 でまあ、それ自体は別に悪いことではなく、むしろ「ソーシャルネットワークサービス」である以上とても正しい使い方なんだろうなと思っています。社会的なネットワークを構築しようと積極的に動いているだけですし。ソーシャルなネットワークだもんね。そのタグを付けているだけでいいねが20とかつくの、普通の人だったらちょっと快感だよなあと思ってました。

 でもこれってちょっと危うい側面もあって、「誰かに見てもらえて嬉しい」とか「いいねがつくと嬉しい」が「誰かに見てもらえないと嫌だ」とか「いいねがつかないと嫌だ」になる瞬間が、たぶん少なくない割合の人に起こるのです。

 承認欲求というのは誰しもが持っていますし、それ自体が悪だとは思っていません。が、「私にはいいねがつかない」から「あの人にはついているのに私にはつかない」「あの人が褒められているのに私は褒められない」に移行すると、めちゃくちゃ苦しくなるんです。なので、手っ取り早く承認されたい人たちがどうするかというと、イラストの世界でも良く話題になるトレパクや盗作、あれおれ詐欺なんかが、書写の界隈で度々起きていました。

 でも、同じ界隈であるはずの書道ではほとんどおきません。リアルで起きても先生が見れば一発で即バレしますし、字は思ったよりもその人のクセが強く出ます。ごまかしが利きません。本来、書写もその位置づけだったはずなんですけど、褒められたい、認められたい、いいねがほしい、から、注目度が高くなった界隈ではおきやすいのだろうなと思っていました。

 書道も書写のもとである硬筆も、地道な練習でしか絶対に上手にならないものです。元から綺麗な人は少しだけ有利ですが、じゃあ書道的に上手な字が一朝一夕に身につくかっていうとそれは絶対に無理で、お手本を見て何千回も真似して、それでようやく少しだけ「まし」になる、みたいな地味な努力が必要な趣味です。しかも「美しさ」には色んな基準がありまして、この字であれば誰からも絶賛されるみたいなものは、本当に一握りの著名な先生でもたぶん無理でしょう。

 また、書道は、紙と墨の一発書きの芸術です。やり直しボタンはありません。たった一枚の傑作ができあがるまでに、何百枚も紙を無駄にするのも珍しいことではありませんし、思い通りの作品ができるまで何百もある字体を組み合わせて試行錯誤することが必要なのです。なので、そんな世界で承認欲求を炸裂させたら、ただ苦しいだけなのにな……と思いながらときどき起きる騒ぎを眺めていたりしました。

 まあでも、あれです、どんな趣味でも「認められたい」「褒められたい」が「認められないと嫌だ」「褒められないと嫌だ」になるとすごく苦しくなっちゃうんで、そう思いそうになったら少し距離を置かないとなあ、と自分でも思っているところです。小説とかも、投稿サイトだと数値で人気が見えちゃうからねえ。アレはわりと諸刃の剣だと思うんですよね。やる気の元にもなるけど、ガッカリの元にもなる。私もあんまり気にしすぎないようにしています。

 今はMastodonにいるんで、書写も勝手に自分でお題をはじめまして、今は完全一人で #山本周五郎書写 という趣味炸裂の書写に変更しました。めちゃくちゃ気楽です。合わせて始めた #マストドン書写部 にはもう一人のフォロワーさんがやっぱり自分の好きなお題で参加してくださっているので嬉しいですw 趣味は、仲間がいると嬉しいものですが、仲間がいなくてたとえ一人であっても楽しい、夢中になる、好きだ、と思えるものをやってるほうがたぶん楽しいのではないかなと思います。

 つうか、趣味って、人に自慢するための道具にし始めたらつらいだけなんだけどね……。趣味の上にはプロがいらっしゃいますし。異世界転生じゃあるまいし、いきなり最強ステータスになることなんて現実世界じゃありえません。つらい地味な作業と修行を重ねても苦じゃないものを選んで、面白いなあ、やめられないなあってやってるほうが、人生楽しいんですよ。そういうものに出会えたら、それだけで人生幸せなんですよ。砂漠の中に落ちてるダイヤ拾ったと思って大事にしてください。って何度でも言う。

 特に落ちはないです。(「・ω・)「

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